■民法九百五十八条と民法二百五十五条
不動産の共有持分も財産ですから、持分の共有者が死亡すれば相続の対象になります。
しかし、共有者の相続人がいるとは限りません。
たとえば、AとBふたりで不動産を共有していたとします。
ある日、不動産の共有者であるAが死亡しました。Aには配偶者も子供もなく、兄弟姉妹もいません。
両親もすでに亡くなっていました。
つまり、相続人が誰もいない状態です。
このような場合、共有の名義人Aの持分は誰の物になるかが問題です。
共有名義Aの持分の相続は、Bには関係ないと思うかもしれません。
実は、共有名義Aの持分が誰の物になるのか、Bには大いに関係あるのです。
不動産は基本的に名義人すべてが売却に参加するため、共有名義人Aの持分が死亡により相続人あるいは誰かの物になるのか分からないと、売却など不動産に関する重要な手続きが難しくなってしまいます。
BにはBの共有持分があるからといって、関係のない話ではありません。
不動産の共有名義人が死亡したときの相続は次のような条文が定められています。
第二百五十五条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
第九百五十八条
前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
共有名義人が死亡した場合は不動産の持分は基本的に相続人に相続されます。
しかし、相続人がいない場合(相続人不存在の場合)、不動産の共有名義人の物になる可能性があるということです。
例で考えると、Aの死亡によって、共有名義人であるBの物になる可能性があるということです。
■手続きの仕方と相談
共有名義人が死亡し、かつ、相続人がいない場合でも、いきなり共有名義人の物になるわけではありません。
Aの死亡によりA持分が共有名義人Bの物になるまでには、裁判所で「相続人不存在」の手続きを進めなければいけません。
相続人不存在の手続きは次のような流れで進みます。
・裁判所に死亡者の相続財産管理人の申立てをする
・相続財産管理人の選任公告(2カ月以上)
・債権者や受遺者に申し出るように公告する(2カ月以上)
・相続人捜索の公告(6カ月以上)
・特別縁故者への財産分与の公告
・申立てによる裁判所の判断
・相続財産の受け取り
このように、相続人不存在の場合は裁判所の手続きを経なければいけません。
死亡した共有名義人の相続人不存在の手続きの中で不動産の共有名義人に持分が帰属するという流れです。
■最後に
不動産の共有名義は2人以上の複数名による不動産の所有形態です。
共有名義の持分も財産なので、共有名義人が死亡すると相続の対象になります。
ただ、相続人がいない場合は裁判所の相続人不存在手続きを経て共有名義人に帰属する流れなので、途中で「共有名義になっている不動産を売却したい」と思っても、難しいのが実情です。
共有名義は売却のときにトラブルになるケースも少なくないので、早い段階で共有状態を解消しておくこともトラブル防止策です。
共有名義の不動産の売却や手続きについては、お気軽にアレスホームへご相談ください。